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ウェルビーイング経営とは?メリットと成功している企業事例をご紹介

ウェルビーイング経営とは、自社の利益だけでなく、企業の取引先や従業員の幸せまで実現する経営のことを指します。離職率の低下から生産性の向上まで、企業に多くのメリットがあると注目を浴びているウェルビーイング経営を正しく理解していますか?

この記事ではウェルビーイング経営の基礎知識から、具体的な取り組み方、企業事例まで解説します。企業の経営者、人事・人材育成部門、マネジメント層の方はぜひご一読ください。

 


ウェルビーイングとは?

ウェルビーイング(Well-being)とは、精神・肉体の健康と社会的な健康を意味する概念を指し、WHO(世界保健機関)の定義した基準が一般に広く普及しています。

“健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態(well-being)にあることをいいます。”

出典)一般社団法人日本ウェルビーイング医学協会(https://www.jswm.jp/)

さらに詳しくみていくと、ウェルビーイングには、「主観的ウェルビーイング」と「客観的ウェルビーイング」の2つの側面があります。「主観的ウェルビーイング」は、主観的な自己評価により測られるものです。「人生の充実度」や「個人の幸福度」と言い換えると分かりやすいでしょう。

一方の「客観的ウェルビーイング」は、客観的な数値基準により、外部から測られるものです。たとえば、「GDP(国内総生産)」や「健康寿命」が該当します。

 

1.主観的ウェルビーイングが注目を集めている

昨今注目を浴びているウェルビーイングの中でも、特に「主観的ウェルビーイング」の側面が注目されています。人々が豊かな人生を過ごし、社会が正しく発展していくためには、客観的な数値基準だけでは不十分です。GDPなどの「客観的ウェルビーイング」が伸びたとしても、もっとも重要な「個人の幸福度」を測る「主観的ウェルビーイング」には影響がないことがわかってきました。「主観的ウェルビーイング」こそ重視する必要があります。

「主観的ウェルビーイング」は、個人の人生に与える影響だけではなく、企業の業績に与える影響が大きい様々な要素との強い相関があることがわかってきました。そうした背景もあり、欧州を始め様々な国でウェルビーイングの推進活動が活発化しています。一企業としても、ウェルビーイングに取り組むことは多くのメリットがあります。後ほど詳しく解説します。

 

ウェルビーイング経営とは?

ウェルビーイング経営とは、自社の利益を追求するだけではなく、経営に関わる関係者全員の幸せ
を追求する経営です。似た取り組みとして、自社社員の健康状態の把握・管理・改善を目的とする
健康経営がありました。しかし今では、健康状態の改善を図るだけでは不十分とされています。本
来目指すべき状態は、体が健康で病気にならないだけではなく、目的意識を持って主体的に仕事に
取り組み、生き生きと働ける状態です。

そのために、ウェルビーイング経営が必要とされています。ウェルビーイング経営が効果を発揮する
ためには、特に3つの視点が重要です。

・定義:取り組む目的を社内に示して、自社に合わせてウェルビーイング経営を定義すること
・具体化:定義・概念の浸透だけでなく、具体的な施策や社内ルール・規定にまで落とし込むこと
・可視化:取り組んだ結果を可視化するために、数値による成果観測を行うこと

続いて、より具体的な2つの考え方を紹介します。

1.PERMAモデルによる5つの要素

ポジティブ心理学の父として有名なマーティン・セリグマン博士によって2011年に発表されたのが「PERMAモデル」です。PERMAモデルでは、人が持続的な幸福を感じるためには、次の5つの要素を満たす必要があると説明しています。

・Positive emotion:ポジティブな感情を持っている
・Engagement:何事に対しても積極的に関わっている
・Relationship:他者と肯定的で良質な関係性を築いている
・Meaning:人生に意味・意義を見出し、自覚している
・Accomplishment:達成感を感じている

PERMAモデルに沿ってウェルビーイングを推進していくことで、組織全体が活性化して、社員の幸福度が高まると考えられます。

 

2.ギャラップ社の考える5つの要素

米国のコンサルティング会社であるGallup社は、次の5つの要素が重要だと説いています。

・Career Wellbeing(仕事による幸福)
Social Wellbeing(良好な人間関係による幸福)
Community Wellbeing(地域コミュニティによる幸福)
Physical Wellbeing(身体的な幸福)
Financial Wellbeing(経済的な幸福)

これら5つの要素は、米国だけでなく、全世界どの地域であっても、文化・宗教的な背景を問わず重要だとされています。ウェルビーイングに取り組む際には、5つの要素を含む施策にするようにしましょう。

ウェルビーイング経営が求められる背景

ウェルビーイング経営について概要を理解したところで、ここからはウェルビーイング経営がより求められるようになってきた時代背景を解説します。

1.人々の価値観の変化

大きな理由の1つとして、人々が「モノ」から「心の豊かさ」を求めるようになったという価値観の変化があげられます。これまでは効率や利益、売り上げなどの経済指標を優先してきた結果、地域格差の拡大や環境の悪化、貧困などのさまざまな問題が発生しました。これらの問題は今までの「モノ」の価値観では解決できない問題ばかりですので、地球規模で調和やよりよい社会をつくる方向へと人々の価値観が変化してきました。
 

2.働き方改革の実施

日本は少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少に直面しています。また、ブラック企業等の社会問題もあり、働き方の多様化や見直しが進んできました。働き方改革では、長時間労働の是正、雇用形態にかかわらない公正な待遇、高齢者や女性の就労促進など、働くひとりひとりが多様な働き方を選択でき、より良い将来の展望をもてるようになることが目標です。誰もが公正に働ける世の中は、ウェルビーイングを目指している状態といってもいいでしょう。

 

ウェルビーイング経営のメリットとは?

ここからはウェルビーイング経営の具体的なメリットについて解説していきます。

1.離職率の低下

ウェルビーイング経営に取り組み、人間関係や労働時間を改善することができれば、離職率の低下に繋がります。なぜなら、退職理由として多いのは報酬や福利厚生などの金銭面ではなく、人間関係や労働時間といった理由が圧倒的に多いからです。転職サイトのリクナビNEXTが実施した、退職アンケート調査を紹介します。

“退職理由の本音ランキング
ー1位:上司、経営者の仕事の仕方が気に入らなかった
ー2位:労働時間、環境が不満だった
ー3位:同僚、先輩、後輩とうまくいかなかった“

出典)転職理由と退職理由の本音ランキングBest10
(https://next.rikunabi.com/tenshokuknowhow/archives/4982/)

このことから、人間関係や労働時間、労働環境を改善することは企業が取り組むべき課題と言えるでしょう。

2.生産性・企業価値の向上

主観的ウェルビーイングは、経営に与える影響が大きい指標と強い相関があるといわれています。たとえば、主観的ウェルビーイングが高い人は、低い人と比較して、売上は37%、生産性は31%、創造性は300%も高い傾向にあるというデータがあります。ウェルビーイング経営の推進は、企業価値の向上につながるといえるでしょう。

3.採用率の向上

就職・転職活動をする際に、従業員が投稿している企業の口コミサイトで情報収集することが一般化
しています。そして口コミサイトでの評価は、従業員の主観的ウェルビーイングによって大きく左右
されます。ウェルビーイング経営に取り組み、主観的ウェルビーイングが高い従業員が多い企業は、
従業員からの高い口コミ評価を得ることができ、結果として、就職したい、転職したいと考える方も
増える(採用率が向上する)でしょう。

4.従業員のモチベーションの向上

前述の通り、職場の人間関係、労働環境が良いことは、仕事に対するモチベーションにも良い影響を
与えます。従業員の主観的ウェルビーイングが高まるよう、労働環境の改善に努めましょう。従業員
が心身ともに健康な、幸福度の高い環境を作り出すことが出来れば、高いモチベーションにつながり
ます。

5.医療費の削減

従業員が健康的な状態で仕事に取り組むことが出来れば、医療費の削減につながります。間接的な効
果ですので目に見えづらいですが、たとえば、労働災害による医療費は直接的に削減することができ
るでしょう。

ウェルビーイング経営に取り組む際の注意点とは?

ウェルビーイング経営に取り組む際には注意点もあります。
企業・経営者側が1番気にするのは、利益目標を過度に追求することが難しくなる点ではないでしょう
か。確かに、自社だけではなく関係者全員からの理解を得ながら利益を追求する必要があるため、何も
障壁がない場合と比較すると、短期的な視点では利益が少なくなってしまう可能性があります。

しかしながら、前述のように、ウェルビーイング経営には従業員の生産性の向上や採用面でのメリット
も多くあります。そのため中長期的な視点で考えると、結果として利益向上にもつながると考えられて
います。短期的な視点ではなく、中長期的な視点で腰を据えて取り組みましょう。

ウェルビーイング経営への取り組み例

ウェルビーイング経営を進めていくためには、まずは従業員の置かれた状況を正確に把握することが重要です。社内アンケートやサーベイなどを実施し、現状を把握するとよいでしょう。その上で、「どのような取り組みを実施すべきか」を検討します。

ウェルビーイング経営の実現に向けた取り組みの例としては、以下の4つが挙げられます。

ウェルビーイング経営への取り組み例
●福利厚生を充実させる
●従業員のヘルスケアをサポートする
●社内コミュニケーションを活性化させる
●労働環境を改善する

 

1.福利厚生を充実させる

従業員のウェルビーイングを高めるには、プライベートの充実をサポートし、英気を養ってもらうことも大切です。運動・レジャー・旅行などライフスタイルをサポートできるよう、福利厚生を充実させましょう。

具体的な取り組みの例

●フィットネスクラブの割引チケットの配布
●外部講師による社内でのヨガ教室の開催
●映画鑑賞券の配布
●飲み会の補助 など

2.社内コミュニケーションを活性化させる

社内の人間関係や職場の雰囲気に問題があると、従業員がストレスを感じたり、生産性の低下につながったりします。こうした状況を避けるために必要となるのが、社内コミュニケーションの活性化です。従業員同士がコミュニケーションを取りやすい環境を整え、職場の風通しを良くしていきましょう。

具体的な取り組みの例

●メンター制度やブラザー・シスター制度の導入
●社内部活動の推奨
●懇親会にかかる費用の補助
●リフレッシュスペースや談話室の設置
●コーヒーブレイクの実施 など

3.労働環境を改善する

ウェルビーイング経営を推進するためには、労働環境の改善にも取り組む必要があります。長時間労働や休日出勤などが常態化している場合には、早急に是正しましょう。また、場所や時間を選ばずに働くことができる「柔軟な働き方」を促進していくことも大切です。

具体的な取り組みの例

●長時間労働や休日出勤の実態把握
●業務分担の見直しや業務効率化による、長時間労働・休日出勤の是正
●有給休暇の取得推奨や計画年休の導入
●在宅勤務制度やフレックスタイム制の導入 など

なお、在宅勤務制度を導入する際は、Web勤怠管理システムや情報共有ツールなどの活用を検討する必要があるでしょう。

4.従業員のヘルスケアをサポートする

ウェルビーイング経営を進める上で不可欠なのが、従業員のヘルスケアのサポートです。従業員の心身の健康状態を把握し、必要に応じて改善に向けたサポートも実施しましょう。

具体的な取り組みの例

●健康診断や予防接種の実施
●がん検診の費用負担
●ストレスチェックの実施
●産業医との個別面談の設定
●メンタルヘルス不調の従業員に対するサポート体制の構築 など

自らの心身の健康状態に関心を持つ従業員が増えるよう、社内報や社内メールなどを通じて啓発活動を行うことも重要です。また、在宅勤務者が多い企業では、オンラインでの健康相談に対応できる環境を整備するのが望ましいでしょう。

ウェルビーイング経営に取り組んでいる企業の事例

実際、各企業はどのようにウェルビーイング経営を進めているのでしょうか。ウェルビーイング経営に取り組んでいる企業の事例を紹介します。

1.ロート製薬の事例

ロート製薬は、ロートグループ総合経営ビジョン2030として、「Connect for Well-being」を掲げています。これは、事業活動を通じて世界中の人たちのウェルビーイングに貢献するとともに、健康で幸せに過ごすことができる持続可能な社会の実現を目的としたものです。

また、同社ではウェルビーイングを「肉体的、精神的、社会的」に満たされた状態であることに加え、「それらを取り巻く環境面」も満たされた状態であると定義。ウェルビーイング経営の一環として、副業・兼業の容認や、自分自身のウェルビーイングを自己評価してもらう「Well-beingポイント」の導入などを行っています。
(参考:ロート製薬株式会社『ビジョン』『従業員エンゲージメント』)
(参考:『【アカデミア×ロート製薬】人的資本経営とウェルビーイング、人事と経営に求められる変革とは~未来の強い組織の在り方~』)

2.丸井グループの事例

丸井グループは、1962年の丸井健康保険組合の設立とともにウェルビーイング経営を開始しました。
同社では、ウェルビーイング経営を「『Well-being』の視点を通じて新しい価値を創り、社会全体を
『しあわせ』あふれる場所にしていくこと」と定義。「基盤のヘルスケア」と「活力のWell-being」
の2つの軸から、ウェルビーイング経営を進めています。

「基盤のヘルスケア」の取り組みとしては、「労働時間管理・勤務体系の多様化」や「時間外労働の
削減」「禁煙治療に要した費用の補助」「メタボ率の改善に向けたヘルスアッププログラムの提供」
などがあります。「活力のWell-being」では、グループ横断の公認プロジェクト「Well-being推進プロ
ジェクト」を発足。プロジェクトメンバーとサポート役の管理職メンバーが主体となり、さまざまな
ウェルビーイング活動を企画・実行しています。
(参考:丸井グループ『人と社会のしあわせを共に創る「Well-being経営」』)

3.楽天グループの事例

楽天グループでは、従業員にとっての「個人のwell-being」、会社というチームにとっての「組織の
well-being」、これらを満たした上で事業を通じて実現し得る「社会のwell-being」の3つの視点で、
ウェルビーイング経営を推進しています。

同グループでウェルビーイング経営の推進役を担っているCWO(Chief Well-Being Officer)は、ウェル
ビーイングを「自分らしく生きること」と定義。「個人のウェルビーイング向上には、組織のウェル
ビーイング向上が不可欠」「自分らしく生きるウェルビーイングと、合理性を追い求めるウェルビー
イングのバランスが取れた組織にしていく」といった思いの下、職場環境の整備や文化の醸成などに
取り組んでいます。
(参考:楽天グループ『トップコミットメント』)

まとめ

ウェルビーイング経営を行うことにより、「生産性の向上」や「離職防止」などのメリットが期待で
きます。ウェルビーイング経営に取り組む際は、「従業員のヘルスケアのサポート」「社内コミュニ
ケーションの活性化」「労働環境の改善」「福利厚生の充実」という4つを意識することが重要です。

企業事例も参考にしながら、自社で実現可能な取り組みについて検討し、ウェルビーイング経営を推進
してみてはいかがでしょうか。